記者バカ一代 マル秘取材メモで振り返る、昭和&平成「記者会見」裏面史

号泣!大爆笑!居直り!記者会見に見る、昭和・平成史

奈美悦子 芸能界初の珍事「バストトップ喪失」で執刀医を訴えたら…

                              

 久本雅美の一発ギャグに「ヨロチクビー!!」という、何度見ても笑ってしまうネタがあるが、その「トップ」をめぐる笑えない珍騒動が、平成8年(1996)6月に勃発した、奈美悦子の日本芸能界史初ともいう「バストトップ喪失事件」だった。

 奈美が週刊誌での一糸まとわぬグラビア撮影と写真集発売に際し、「母乳での子育てで肥大し、それがコンプレックスだった」というバストトップの整形手術を受けたのは、同年3月12日のこと。

 だが、2日後に手術箇所を見ると「右は1.2ミリ。左は根元からなくなっていた」として、執刀したS医師に4800万円の損害賠償を求める訴訟を起こしたのだ。

 東京・千代田区内のホテルで緊急記者会見を開いた奈美は、涙ながらに訴えた。

「ないと分かった時は、言葉が出ないくらいショックでした。Tシャツを着ても凹凸がなく、3カ月経った今でも痛くて。生理の日はもっと敏感になるんです。布団の中でもいろいろと考えて眠れないし、食事も摂れない。10キロちょっと痩せました。元に戻してほしい」

 同席した弁護士は(1)バストトップの切りすぎ、(2)手術方法が一般的ではない、(3)インフォームドコンセント(事前合意)の不足、といった過失があったと主張。

 だが一方のS医師側は、

「根元は残っている。ご本人の希望に沿ったという形で、手術は成功です。真っ平になるくらいにしてほしいと言われました。具体的な数字も聞いています。もちろん、再生手術も可能です」

 両者の意見は真っ向から食い違うのだった。

 この、バストトップ事件は女性にとって大変デリケートな問題とあり、報道も大々的。

 筆者も何人かの形成外科専門医を取材し、参考意見を聞いてみたのだが、

「一般的な手術方法ではないが、だからといって間違っているとは言い切れない」との医師がいる一方、「やはり手術前の相談が不十分だった可能性は否定できない」という医師もいて、意見はバラバラ。

 そこで美容形成をめぐる裁判に詳しい弁護士に話を聞くと、こんな答えが返ってきた。

「一般的な外科手術と違い、美容形成というのは本人の主観が大きく、術後のイメージがちょっと違っていただけで、訴訟に発展するケースも少なくないんです。だからこそ、外科手術以上にインフォームドコンセントが重要になる。ただ今回の場合、手術から4カ月。まだ傷跡が変化している時期での民事訴訟は、珍しいケースだと考えていいでしょう」。

 7月16日に裁判はスタート。

 1年後の同9年(1997)10月8日、両者が裁判所の和解勧告を受け入れ、S医師側が430万円の和解金を支払うことで決着した。

 とはいえ、芸能史に残る、なんとも笑えない珍事件となってしまったのである。