記者バカ一代 マル秘取材メモで振り返る、昭和&平成「記者会見」裏面史

号泣!大爆笑!居直り!記者会見に見る、昭和・平成史

桑田佳祐 「挑発?歌詞」に長渕剛が「ケンカをふっかけるなら相手をみろ」の全面戦争

                                

 コトの起こりは、桑田佳祐が平成6年(1994)9月に発売したアルバム「孤独の太陽」の中の1曲「すべての歌に懺悔しな!!」の歌詞にあった。

〈TVに出ないと言ったのにドラマの主役にゃ燃えている〉

〈小粋な仮面でどこかパクった小言を連呼する〉

 そんなフレーズが、矢沢永吉長渕剛を批判したものではないのか、と一部夕刊紙が指摘したのである。

 とはいえ、本来なら「よくある飛ばし記事」で済まされるはずが、そうならなかった理由は当時、矢沢が「アリよさらば」(TBS系)でドラマに初出演していたこと。

 一方、長渕もシングル「RUN」をめぐる盗作騒動の渦中にいたことから、本人も驚く大騒動に発展してしまったのだ。

 11月13日、桑田が大宮市でのコンサート終了後、緊急記者会見を開くことになり、大物女優を直撃する予定だった私は、編集部からの連絡で急遽、駆けつけることになった。

 会見には所属事務所アミューズの大里洋会長、所属レコード会社ビクターの制作部長が同席。

「歌詞の一部だけを抽出して、長渕さんや矢沢さんを誹謗している、と書かれましたが、今回のアルバムは私小説にまとめたいという気持ちから、自分のことを歌ったもの。特定の人を意識したということは絶対にありません」

 桑田は沈痛な表情で、記事の内容を否定。

 さらに長渕と矢沢ほか、関係者やファンに迷惑をかけたことを謝罪し、本来ならばこれでシャンシャンとなるはずだった。

 ところが、長渕が11月下旬に発売された月刊「Views」誌上で「オレは桑田佳祐を許さない」と胸中を告白。

〈ケンカをふっかけるんだったら、相手をみてやりゃよかったのに。このごにおよんで、勝負するんだったら、音楽と音楽でやろう、なんてきれいごとは通じませんよ。そんなレベルじゃありませんから〉

 まさしく、宣戦布告である。

 同誌によれば、桑田が会見を開いた翌日、レコード会社の部長が「詫び状」を持参したが、長渕は、

〈詫びを入れるんなら入れるで、1対1という場面をきっちり作って筋を通せといいたいんだ〉

 との思いから、桑田の自宅宛てに手紙を送付。

 同時に桑田の自宅と事務所に電話を入れたが、返事がなかったことから、雑誌での反論となったという。

 これはその後、吉田拓郎泉谷しげるなどの大御所を巻き込み、さらなる騒動に発展することになるが、

「そもそも言いたいことを言い、歌いたいことを歌うのがシンガー。だから、ケンカ大いに結構。仲良くする必要なんてないんだよ」

 ある音楽評論家が言った、そんな言葉に妙に納得させられたのである。