記者バカ一代 マル秘取材メモで振り返る、昭和&平成「記者会見」裏面史

号泣!大爆笑!居直り!記者会見に見る、昭和・平成史

今井絵理子 女性有権者をドン引きさせた 「第一線越えていない」発言の余波

                              

 元参議院議長で女優の扇千景さんが3月9日、食道胃接合ガンのため、都内の病院で89歳の生涯を閉じた。

 政治家時代は歯に衣着せぬ強気の発言で知られた女性だ。

 平成14年(2002)5月に発覚した夫・中村藤十郎(当時は中村鴈治郎)と京都の舞妓との「51歳差不貞騒動」の際も、マスコミに対し「気にするも何も、御贔屓の皆さんがあって今の主人がある。この仕事、モテなかったら務まりませんから」と余裕の態度で臨み、その姿は女傑と言われたものである。

 政界とはいえ、むろん色恋沙汰も少なくない。

 ただ、政治家は言葉が命。その対応いかんで、天国から一気に地獄へ、という場合もあるのだが、扇さんとは正反対に、しどろもどろな釈明ですっかり人気を失うことになったのが、自民党今井絵理子参議院議員だった。

 今井氏と神戸市議会議員(当時)の橋本健氏との不貞が平成29年(2017)7月、「週刊新潮」によって報じられる。

 歯科医でもあった橋本氏は、若手イケメン市議。

 将来の国政進出も噂される自民党兵庫県連のホープだったが、妻と2人の子供を持つ既婚者だ。

 一方、今井氏にも障害を持つ一人息子がいたのだが、同誌によれば、今井氏はその長男を家に残したまま、橋本氏と2泊3日に及ぶ「お泊りデート」を楽しみ、一部始終をレポートされたのである。

 報道を受けて7月27日に記者会見を開いた今井氏は、

「私も彼に好意を抱いていたのは事実です」

 としながらも、

「市議の結婚生活が長く破綻しているとはいえ、一線を越えてはいけないと思い、『きちんとケジメをつけてから考えましょう』と申し上げました。そして、今日までこの約束を守ってもらっています」

 つまり、宿泊はしたものの、肉体関係を全面否定したのである。

 橋本氏も記者会見を開くと、改めて、

「一線は越えていないんです。(妻とは)4~5年前から事実上、婚姻関係が破綻していて、不貞関係ではないと思っていました」

 そう弁明すると、改めて肉体関係がなかったことを強調したのである。

 ところがこの直後、橋本氏に架空の領収書を使った政務活動費の不正受給が発覚。

 詐欺罪での有罪判決が下り、議員辞職に追い込まれ、妻とも離婚。

 子供の親権を手放し、経営していた歯科医院を閉鎖するという結末を迎えたのだった。

「今井氏はシングルマザーの子育てや障害者支援の苦労を訴え、多くの女性の支持を得てきましたが『一線は越えていない』と、そこばかりを強調したことで、かえっていやらしいイメージが強くなり、母親層の支持者は離れていきました。対応としては最悪でしたね」(政治ジャーナリスト)

 現時点ではまだ2人が再婚したとのニュースは届いていないが、完全に「一線」強調が裏目に出た会見となってしまったのである。