25歳年下の女性社長との5年越しの不倫愛が報じられ、令和3年(2021)、所属するジャニーズ事務所から退所を発表した近藤真彦。
近藤というとすぐ頭に浮かぶ有名な記者会見が、平成元年(1989)12月31日、テレビ朝日で午後10時に突如として行われた中森明菜とのものだろう。
集まった報道陣は200人。そんな中、
「毎日元気づけて励ましの言葉を送ってくれた近藤さんには、私なんかより、もっともっと辛い苦しみを与えてしまった」
と語り、膝まで頭を下げる明菜に対して近藤は、
「一緒に応援していかなければならないと思い、ずっと黙っていましたが、明菜ちゃんのレールを敷いていかなければならず、この半年はつらい毎日でした」
どこか吹っ切るように語る姿が印象的だった。
この会見では、2人の背後に置かれた金屏風が、いまだ謎として語られているが、私にとって忘れられない出来事は別にある。
それが近藤の母親の「遺骨盗難事件」だ。
明菜とのスキャンダルを起こす前年の昭和63年1月初旬。
私は年末の紅白歌合戦の慰労会を兼ね、NHKスタッフと都内のレストランで会食をしていた。
そこへ某歌手のマネージャーが新年の挨拶に訪れ、紅白の舞台裏話などを聞いている最中に、彼がこう切り出したのだ。
「実はマッチのお母さんの墓が荒らされたらしいんですよ。詳細は分かりませんが、今、(近藤が契約するレコード会社の)CBSソニーでは大騒ぎになっているという話です」
一瞬、耳を疑った。
というのも、今の時代に墓荒らしなどあるのだろうか。
だが、聞いた以上は、確認せねばなるまい。
編集部に連絡を入れ、直ちに現場に急行した。
近藤の母・美恵子さんが眠るのは、横浜市栄区の「横浜霊園」だった。
管理事務所を訪ねると「私どもの口からは…」とくぐもった返答が。
そこで周辺を聞き込むと、
「刑事さんが不審な人や車を見かけなかったかと尋ねてきた」
という複数の証言を得られた。
所轄署を直撃すると詳細は話さないものの、墓荒らしは事実だった。
ジャニーズ事務所に連絡を入れるが、
「捜査中のため、コメントは差し控えさせていただきたい」という。
早速、CBSソニーをはじめ、テレビ局関係者を取材すると、徐々に事件の詳細が判明していった。
CBSソニーに男の声で、
「今夜中に近藤真彦の母親の墓を調べておけ!」
という電話が入ったのは、前年12月26日午後6時過ぎのこと。
近藤の父親の立ち合いのもと、墓を調べたところ、母親の骨箱ごとなくなっていたという。
さらに2日後にもCBSソニー社長宛に
〈レコード大賞を辞退しろ。さもなければ、お骨を処分する〉
という内容の手紙が届いたという。
私は所轄署及びレコード会社関係者の談話を取った後、原稿を入れた。
記事はスクープとなり、翌週からは各メディアによる取材合戦が始まったのである。
そんな遺骨盗難事件から34年。
有力な手がかりがないまま、事件は時効を迎えた。
遺骨を盗んだ不届きな「愚か者」は、いまだに捕まっていない。